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9月9日ヘラルド・ヌニェス「アグア、エスパシオ、ティエンポ、イ・ピエドラ」

9月9日はマラガから東へ行った海岸沿いの町、ヨーロッパのバルコニーとよばれるネルハの洞窟でのリサイタル。鍾乳洞で有名なこの洞窟では、毎年、フェスティバルが行われ、数々のアーティストが公演しているが、今日の登場はヘラルド・ヌーニェス。
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開演は13時。早くて20時、遅いと24時というのが普通なスペインでは異例の早さだ。
なお洞窟見学はコンサートとその後片付けが住む16時まで一般の入場も休止だ。
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パーカッションのセピージョ、コントラバスのパブロ・マルティンとのトリオでたっぷりきかせてくれた。このトリオはシンプル明解。確実にわたしたちを楽しませてくれる。
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奥方カルメン・コルテスの舞踊団作品「イエルマ」のために作曲した曲からブレリアへとのオープニングをはじめ、ほとんどいつものレパートリー。
セピージョとパブロのデュオはいつみても楽しい。
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この公演のために特別に作曲したロンデーニャ「クエバ・デ・ネルハ」を初演。
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現代音楽のような、不安をあおるようなトーンではじまり、フラメンコへ。ギター曲のロンデーニャの祖、ラモン・モントージャや、現代的なギターのロンデーニャの基本、パコ・デ・ルシアのクエバ・デル・ガトの要素もオマージュのようにつかわれる。
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最後は客席全員がスタンディングオーベーション。こたえてはじまるフィン・デ・フィエスタではセピージョが歌い、パブロが踊る。。。
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極上の時間を過ごさせていただきました。。。。

"Agua, Espacio, Tiempo y Piedra" de cómo una guitarra suena y crea en el embrijo del agua el tiempo el espacio y la piedra Gerardo Nuñez
Contrabajo; Pablo Martín
Percusión; Angel Cepillo

Málaga en Flamenco Siete Maravillas
9 de septiembre, 13:00 Cueva de Nerja, Nerja

# by kiokos | 2007-09-10 01:26 | 公演評  

9月9日「ポル・ロス・シエテ・ドローレス」

アルチドーナという、アンテケーラからグラナダ方面にむかった、歴史のある山間の町での公演は、聖週間の音楽集。町の中心にある、珍しい八角形の美しい広場が会場。

聖週間というとフラメンコではサエタ!であるわけだが、そればかりではない。楽隊による音楽、太鼓隊、ムシカ・デ・カピージャとよばれるオーボエ、クラリネット、ファゴットによる音楽…。
同様にセビージャの聖週間だけが聖週間ではない。アンダルシアの各地で、それぞれ特徴的な聖週間が祝われている。
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アルチドーナの鐘ならし隊、カンパニジェーロスが露払いしたあとは、マラガの楽団の演奏で幕をあけ、地元アルチドーナのこどもによる歌が続く。ありきたりな表現で恐縮だが、まさに天使のような、である。
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楽団の演奏で、十字架をのせた御輿が登場する。マラガ様式というか、前後にのびた棒を白いワイシャツに黒ズボンの男たちが肩で担ぐ方式である。
バルコニーからサエタがはじまる。

サエタといってもフラメンコのサエタばかりではない。フラメンコ的なサエタというのは、フラメンコが生まれた18世紀末〜19世紀以降のものなわけだが、聖週間の行列はそれよりもずっと前からあるわけで、もっと古いものと思われるひとつが、ここで歌われたマルチェーナのキンタやクアルタである。
その節回しは日本のお経のそれに酷似している。すなわち単調な中に音階の上下があるというもの。
ムシカ・デ・カピージャをはさみながら、クアルタに続き、古いサエタ、そしてフラメンコ的な節回しのサエタへと、歴史をたどるように歌い継がれていく。
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十字架の御輿が正面の舞台横に安置されると、楽隊の音楽にのって、セビージャのスタイルで、聖杯をのせた御輿が登場する。セビージャのスタイル、すなわち、輿の下に左右にのびた棒を首の後ろで支える方式だ。聖週間だと御輿の下は布で覆われていてみることはできないが、今回は布はなく、コスタレーロとよばれる担ぎ手たちの動きがよくみえる。
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広場に入ってきたとき、胸があつくなり、涙がこぼれた。セビージャ的なセンティードにあふれているせいだろう。セビージャの聖週間でマドゥルガー(木曜深夜)にでる、ヒターノスの担ぎ手たちの動きはなんともいえずに粋なのだ。

御輿が安置されると、グラナダ県ロハスの太鼓隊が登場し、にぎやかに演奏。
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続いて同じロハスのインセンサリオスとよばれる、香炉つかいたちが登場する。
香炉は聖週間につきものだが、彼らは歌い踊るのだ。それも全員が一人ずつソロをとり歌い継いでいくというかたち。私もはじめてみた。ここではシャツにズボンだが、聖週間では衣装をまとうという。
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そして最後はフラメンコのサエタ。グロリア・デ・マラガとアントニオ・デ・カニージャというベテラン二人が歌い継ぐ。巧い。年期を感じさせる美しいサエタだ。
最後は聖週間の音楽の中でも有名な名曲、アマルグーラで御輿がさっていく。
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約2時間半にわたる、アンダルシア的感覚にみちた素晴らしい公演だった。
フラメンコを理解していくには、こういった聖週間の音楽もかかせない。

"Por Los Siete Dolores"Ritual de saetas y otras músicas de la semana santa de Andalucía

Málaga en Flamenco 07
8 de septiembre, 20:30 Plaza Ochavada, Archidona

# by kiokos | 2007-09-09 10:47 | 公演評  

9月8日ミゲル・ポベーダ「ポル・ロス・カミノス・ケ・バン」

23時からは同じ場所でミゲル・ポベーダのリサイタル。

一部はマラガの詩人、ホセ・アントニオ・ムニョス・ロハスの作品をミゲルが歌うというもの。楽譜立てに詩をたててのぞんだミゲル。ギターのフアン・カルロス・ロメーロが作曲したという曲も、言葉がちゃんときこえるように考えてつくられており、シンプルで深い彼の言葉がこちらの心にしみこんでいく。
ミゲルが歌ったのはトナー、ソレアー、そしてアバンドラーの3曲だが、その合間には俳優がかたりをいれ、ギターソロが入るという構成も悪くない。
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短い休憩をはさんでの第二部はフラメンコのリサイタル。
幕開けはファルーカ。意外な選曲だがしっとりときかせる。
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続くマラゲーニャは絶品。もともとリブレを得意とするミゲルだが、いやいや、今日のできは最高の部類に入るのではなかろうか。
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彼はいつもそうなのであるが、単に歌がうまいというだけでなく、彼はフラメンコに身をささげ(entregarse)自分をそのまま観客にさしだし、コミュニケートするのだ。伝わってくるものがだんちがい、なのである。
神との交信の場であったろう教会でのコンサートということもあるのか、彼のエネルギーがそのまま伝わってくるようだ。
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アレグリアス/カンティーニャス、十八番のカンテス・デ・レバンテ、シギリージャ。
なにを歌ってもその曲の性格をしっかり伝え、かつ、彼その人が伝わってくる。
そしてタンゴ! タンゴというと誰もが簡単に歌えそうだが、そこにフラメンコらしさをだし、身体が思わず動いてしまうようなコンパスで、レトラを選び、風格すら漂わせて歌う人はそれほどあるものではない。いやー満足満足。
最後はブレリア。
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が、満場の観客はこれだけでは満足するもんじゃない。
アンコールでまずは新譜に収録されたコプラ(スペイン歌謡)の名曲をフューチャーした曲を。それでもおさまらないとみると、ブレリア。やはり新譜でディエゴ・カラスコとデュエットしたアルフィレーレ・デ・コローレスだ。彼自身も楽しんでいるのだろう、時折みせるとびっきりの笑顔。
最高の夜は彼の最高の笑顔で終わった。
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"Por Las Caminos Que Van" versos y coplas de José Antonio Muñoz Rojas Miguel Poveda
Guitarra; Juan Carlos Romero
actor; Fernando García Rimada
percusión; Paco González
compás; Carlos Grilo, Luis Cantarote

Málaga en Flamenco 07 Siete Maravillas
7 de septiembre 23:00, Colegiata de Santa María, Antequera

# by kiokos | 2007-09-08 21:58 | 公演評  

9月7日ロシオ・モリーナ「ポル・エル・デシール・デ・ラ・ヘンテ」

アンテケーラという、マラガから北へ約1時間、グラナダとコルドバなどの県境にも近い、歴史の町のコレヒアータ・デ・サンタ・マリアという丘の上の元教会での公演。
若手バイラオーラの中でもぬきんでた実力を誇り、次々に作品を発表している、マラガ出身のロシオ・モリーナの新作「ポル・エル・デシール・デ・ヘンテ」は、当初、花崗岩の奇観をほこる、エル・トルカルで公演予定だったが、環境庁からの横やりが入り、間際で公演場所が変更となった。残念。。。。。

教会の奥、祭壇の前に舞台。だが、これは11時からのミゲル・ポベーダの公演用。
その舞台のすぐ下に舞踊用の床がおかれ、そこがロシオのためのステージだ。
「ポル・エル・デシール・デ・ヘンテ」は、ギターなしのフラメンコをロシオが踊るという試み。
すなわち、中世から口承で伝えられてきた物語詩をうたうロマンセ、
無伴奏で、プリミティブなフラメンコとされるトナー、
子守唄ナナ、
そして物売りの売り声、プレゴン
を踊るのである。

歌うのは4人の歌い手。
フラメンコらしさにあふれるヘレス出身、ダビ・ラゴス。
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セビージャの若手で成長著しいロサリオ“ラ・トレメンディータ”
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パケーラ・デ・ヘレスの甥で、パケーラばりの声量をもつ若手ヘスース・メンデス。
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そしてマドリ在住のエル・ファロ
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ロマンセの語りの部分は、亡きエル・ネグロ・デル・プエルトの録音が流れ
歌の部分を彼らが歌うという構成だ。
最初はロマンセ。ロシオは言葉をマルカールするかのように踊る。イスラエル・ガルバンの影響がみえる。
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彼女は才能あふれるダンサーなので、好きなアーティストは、振付けをコピーというかたちではなく、彼らの文法をなぞる、という方法で自分のなかにいれていくのだ。
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ダビとヘスースのトナーの素晴らしさ。ガストールのガイタ(角笛)が響く。
トレメンディータの歌うナナ。みるたびによくなっている歌い手、トレメンディータとロシオのからみは美しい。
最後はプレゴン。物売りの口上、そしてブレリア。
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声と動きでできた凝縮された時間。
すばらしいフラメンコをみせてもらえた。ありがとう!

"Por el decir de la gente" Rocio Molina
cante; David Lagos, El Falo, Jesús Méndez, Rosario "Toremendita"
contrabajo; Luis Escribano
gaita gastromeña; Salvador Bocanegra
caracola marina; Cayetano Marina

Málaga en Flamenco 07 Siete Maravillas
7 de septiembre, 19:00 Colegiata de Santa María, Antequera

# by kiokos | 2007-09-08 19:54 | 公演評  

9月6日「カントス・デ・エスパーニャ」

ヒブラルファロ城でのコンサートも今日が最後。
終幕を見事にかざってくれたのはご当地、マラガ出身の歌い手ロシオ・バサン。
エンリケ・バサガによるピアノ伴奏で、マラガ出身の作曲家、エドゥアルド・オコンの作品を歌った。
純粋なフラメンコではない。どころか、フラメンコ曲でもない。
が、この作品はひろいものだった。
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ロシオ・バサンは歌い手としては、実は一度も注目したことがなかった。
ビエナルのコンクールなどやフェスティバルなどで何度かみているのだが、
が、この、クラシック+コプラ+サルスエラ÷2みたいな、このオコンの作品を歌う彼女は音程もよく巧い。フラメンコのボーカルテクニックをいかし、味わいをあたえている。発音もよくレトラがよくわかるし、感情表現もちゃんとできている。
あれこんな歌い手だっけ? と目から鱗。
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プログラムはピアノソロをはさみつつすすんでいく。このピアノがまたいいのだ。
フラメンコ的といってもいい、思い入れたっぷりな表現。軽クラシック調な感じもあるが、ドビュッシーなどをおもわせるところもある。
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19世紀末か20世紀初めのサロン音楽、っていう感じがするね、なんていってたら、19世紀末のものらしい。なんでもドイツなどにもその楽譜を探し、復興させたのだそうだ。
カフェ・カンタンテではフラメンコだけでなく、クラシックやポピュラーソングも演じられていたというから、こういった曲がフラメンコとともに演じられたことはじゅうぶんに想像できる。
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エスクエラボレーラで、踊ってほしいなあ、という曲もある。まずはぜひ録音して、舞踊もいれた作品を!と切に願う

"Cantos de España"(Eduardo Ocón)
Cante; Rocío Bazán
Piano; Enrique Bazaga

Málaga en Flamenco 07 Son de Málaga
6 de septiembre 23:00, Castillo de Gibralfaro, Málaga

# by kiokos | 2007-09-07 08:51 | 公演評